パリでもっとも長い歴史を誇り、ナポレオン1世の時代から歴史を彩ってきたジュエリー・ブランドであるショーメの世界を堪能できる展覧会「ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界—1780年パリに始まるエスプリ」が東京・丸の内の三菱一号館美術館で梅雨の時期に開催されました。
大人になるまで、私はあまりジュエリーに特に興味はなかったのですが
母親がジュエリーコレクターだったこともあり、幼少期からティアラや貴族の所持しているジュエリーの展覧会などに幾度となく触れてきたことから、
自然と20代も後半に差し掛かろうとした時からジュエリーの魅惑にはまっていきました。
ジュエリー界でも1780年創業というもっとも長い歴史を誇るショーメ。ナポレオン1世と皇妃ジョゼフィーヌの御用達ジュエラーとしても知られ、現代にいたるまで伝統を重んじつつ革新性を追求し続けている素晴らしいブランドで装飾芸術の傑作を数多世に送り出しています。
今回、贅を尽くしたティアラの数々が展示され、丹精なる職人による技術の高さとデザイン性、そして宝石の美しさをじっくりと堪能してきましたので一部紹介致します。
冒頭で掲載している写真は、『バロックの真珠のティアラ』1920-1930年頃の作品です。
率直に申し上げますと個人的に偏愛してしまいましたティアラです。
不揃いのバロックパールがミステリアスな魅力を醸し出していて、まさに息を飲むような美しさ。
深みのある乳白色にいろいろな色みがほんのり感じられ、素材のパワーを感じました。
こちらは『野ばらとジャスミンのティアラ』1830年頃の作品です。
宝石で作られているのに、とても柔和なデザインがとても魅力的です。
こちらのティアラの所蔵がイギリスのウォーバン・アビーです。
ウォーバン・アビーと言う言葉には、紅茶好きのほとんどの方が反応することかと思います。
そう、アフタヌーンティー発祥の地とされるマナーハウスです。ベッドフォードシャーにあるベッドフォード公爵のお屋敷です。
このティアラを発注したのが第7代ベッドフォード公爵で、アフタヌーンティーの習慣を始めたとされる奥様のアンナ・マリアに贈ったものです。
ウォ―バンアビーにビクトリア女王がお忍びで遊びにいらしたこともあったとの事で文化が繋がりとても深みのある一品です。
『カロリーヌ・ミュラのインタリオ・ティアラ』1810年頃
カロリーヌはナポレオンの妹さんだそうです。インタリオとは、沈み彫りという技法で、反対に浮き彫りはカメオと呼ばれます。
見る角度によって少しずつ変化するインタリオが美しいティアラ。真珠はなんと、日本有数の真珠ブランドミキモトのものが使用されています。
カメオと真珠で構成された、とてもラヴリーで高貴な印象が素敵な作品です。
『カーネーションのティアラ』
こちらは中央のダイヤモンドが取り外し可能で、ペンダントになるそうです。
驚くほど大きなダイアモンドを使ったティアラを注文するわけですから、宝石を何通りにも楽しめる提案は一石二鳥であるなと感じました。
それぞれどんな方のために作られたティアラなのかなと想像しながら見ると更に楽しい所は、アンティークジュエリー鑑賞の醍醐味だと思います。
有名な戴冠しているナポレオンや皇妃たちの肖像画、さらに近代のマリー・ローランサンやキース・ヴァン・ドンゲン作の肖像画などがジュエリーと合わせて展示されています。
当時の人たちがどんなファッションとジュエリーを装っていたのかがよくわかる、非常に有意義な展覧会でした。